加賀ゆびぬきとは - 加賀ゆびぬき Thimble master ★30 Gallery

加賀ゆびぬきとは

加賀ゆびぬきとは、金沢に古くから伝わる裁縫道具の「ゆびぬき」です。
詳細な歴史は、このような生活の道具にはわからないことも多く、書き残されているものもありません。
ただ、歴史に見え隠れする様々なことがらから類推してみるばかりです。

そもそも「ゆびぬき」とは何に使うものなのか、最近ではそれも知らない方たちが増えてきたように思います。
まずはそのあたりから…

日本の衣服は「着物」がメインでした。
着物は「解けば一枚の布にもどる」もの、縫い目はすべて「直線」です。
そのために「運針」という技術が発達しました。
短めの針を中指の第二関節にはめたゆびぬきを使って押しつつ、リズム良くちくちくと縫い進みます。布そのものを上下させることで、針がどんどん進みます。これが運針。
そして必要な道具は、針と糸とゆびぬき。

ゆびぬきは、今では市販の既製品がほとんどですが、かつては自分の指に丁度良いものを自分で手作りされていました。これは全国どこでも、です。
和紙を巻いて布をかぶせたもの、その上に可愛い刺繍をしたもの、また本当に実用的に和紙の上に真綿を巻いただけのもの…いろいろあります。
金沢では、加賀友禅が有名ですが、この加賀友禅はとても高価なもので、御針子さんたちが縫っていました。
御針子さんたちも自分のゆびぬきを作ります。
そのときに、加賀友禅を縫った「残り糸」や、洗い張りの時に出る「抜き糸」を使って、糸かがりで紋様をかがり出したものが、加賀ゆびぬきの始まりだと考えられています。
おそらくは江戸時代元禄の頃のことだと思われます。

明治初期から大正にかけて、糸でかがって模様を浮かび上がらせるゆびぬきは、たくさん作られていましたが、その後既製品の登場、また和裁の衰退につれて、次第に忘れられていきました。

加賀ゆびぬきという名称を初めて使ったのは、金沢の小出つや子さんと言う方でした。
つや子さんは加賀てまりを作ったり教えたりしておられましたが、昭和40年代に、偶然に糸かがりのゆびぬきを見つけられ、その後、創意工夫を凝らして、この糸かがりのゆびぬきをよみがえらせました。
そのゆびぬきを「加賀ゆびぬき」と呼び、周囲の方に教え、またお嫁さんである小出孝子さん、またお孫さんの大西由紀子さんに伝えられました。

小出つや子さんのお孫さん、大西由紀子さんは、2003年に東京で「加賀ゆびぬき」の個展を開催、それが加賀ゆびぬきという糸かがりのゆびぬきが、再び世に出るきっかけとなりました。
加賀ゆびぬきの美しさ、かわいらしさに多くの方たちが魅了されたのです。

最近は、和裁に使う、というよりも、この小さなものの上に、糸でかがって描き出される模様の素晴らしさや創作性、また絹糸の輝きに、アクセサリーとして、あるいはコレクションとしての人気が高まっています。

全国に残る手づくりのゆびぬきの中でも、加賀ゆびぬきの特徴としてあげられるのは「真綿を巻いてふっくらさせていること」と「糸で描きだす紋様の多さ」です。
この「紋様」については、創作性も高く、現在でも、大西由紀子さんを始めとして、多くの方たちが新しいデザインを創作し続けています。
私もその1人として努力しておりますが、新たなデザインは新たな作り手によって受け継がれ、創作され続けていくでしょう。

伝統、という言葉があります。
伝統とは、時代の荒波にもまれて生き残ってきたものであり、未来に向けて続いていくものです。
加賀ゆびぬきが「伝統」のものとして、これからも創りつづけられていくこと、また、愛でられていくことを願ってやみません。

加賀ゆびぬき講師プログラム主催
加賀ゆびぬき結の会代表
石井康子